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山王総本宮 日吉大社

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日吉大社について

檜皮葺について

檜皮葺について

国宝日吉大社東本宮本殿の屋根は、檜皮(ひわだ)で葺かれています。檜皮葺とは、読んで字のごとく檜(ひのき)の皮を使って屋根を葺く工法です。
古来より用いられてきた伝統的な工法で、7世紀後半にはすでに文献に記録が出てきます。

檜皮葺の建物は、立地条件や屋根の形状等により差はあるものの、概ね30年程度で檜皮葺の傷みが大きくなるので、その都度、「屋根葺替修理」を繰り返す必要があります。

44年を経て腐朽している東本宮本殿の檜皮葺

檜皮葺の屋根を完成させるためには、① 檜から檜皮を採取する ② 採取した皮を拵える(整形する) ③ 拵えた皮を屋根に葺く、といった作業が行われます。各工程は次のようになります。

①檜から檜皮を採取する

『振り縄』と呼ばれるロープを使用して体を固定しながら、上部の皮を採取します。

耐久力にすぐれた檜皮(ひわだ)は古くから日本固有の特殊な方法で採取(生産)されます。
檜皮を採取する技術者を『原皮師(もとかわし)』と呼んでいます。檜皮葺(ひわだぶき)の仕上がりや耐久性は、材料の檜皮の良否に左右されるところが大きく、檜皮採取は檜皮葺の建物の保存に欠くことのできない重要な技術です。檜皮は、50〜60年以上成長した檜の立木から主に採取します。採取は、原木が傷まないように、秋から冬場、木の中の水分の動きが少ない時期に行われ、内樹皮を傷つけないようにしながら外樹皮(檜皮)を剥ぎ取ります。木の根元部分からへらを差し込み、右手にへら左手に皮を持ち、下から上へ引き剥がす要領で、巾25㎝程度ごとに皮を剥ぎ取ります。
連続して同じ要領で木の周囲を剥ぎ取ります。高いところはロープで体を固定しながらの作業となり、非常に危険で冒険に近い作業です。
皮を剥ぎ取られた木は、約8年程度で皮が再生され、再び採取できるようになります。

←写真説明
『振り縄』と呼ばれるロープを使用して体を固定しながら、上部の皮を採取します。


②採取した皮を拵える (整形する)

檜皮包丁の先端を使って、平葺皮を綴っています。

原皮師(もとかわし)によって採取された皮を『原皮(もとかわ)』といいます。
原皮の状態では、皮はぶ厚く、そのままでは屋根に葺くことが出来ません。そこで『檜皮包丁(ひわだぼうちょう)』と呼ばれる専用の刃物を使用し、荒れた部分やヤニ・節を取り除き、厚さ・形状を整える必要があります。
各部分で使われる皮の大きさに揃えるため、原皮を薄く剥いだ皮を2〜3枚使い、檜皮包丁の先端の尖った部分でコツコツたたいて上の皮が下の皮に食い込むことで1枚の皮となるよう、整形します。この作業を「綴る」といいます。檜皮を採取したり、整形する作業は、非常に地味なもので、屋根に上がり「葺く」作業よりも何倍もの手間がかかると言われています。
なお、檜皮葺では、整形した檜皮を『竹釘』で止めます。
竹釘は、ふうつ真竹(まだけ)が使用されます。決められた長さ(平葺用で3.6㎝)、直径(3㎜程度)になるよう裁断された竹材を天日乾燥させ、その後焙煎し製作されます。

←写真説明
檜皮包丁の先端を使って、平葺皮を綴っています。


③拵えた皮を屋根に葺く

口には竹釘をくわえ、手には屋根金槌を持ち、平葺皮を用いて屋根を葺いています。

檜皮葺を行うには、大きく分けて「葺く」技術と、「積む」技術が使われます。
「葺く」技術は、屋根面を檜皮で覆っていく技術です。最も多く使用される平葺皮(ひらぶきかわ)は、一般的な仕様で長さ75cm、幅は先端で15cm程度の細長い台形をしています。
先ず皮を水で濡らし、1枚1枚横方向に敷き並べます。次に1枚毎に1.2cmずらしながら重ねて葺き上がり、5枚重ねる毎に竹釘を2cm程度の間隔で打ち付けます。この時、檜皮葺用の『屋根金槌(やねかなづち)』を使用します。1枚75cmの長さの皮を1.2cmずつづらしながら葺くので62.5枚重なることとなります。厚さにすると9cm程度の葺厚となります。

←写真説明
口には竹釘をくわえ、手には屋根金槌を持ち、平葺皮を用いて屋根を葺いています。


釿で軒付を切り揃えています。

「積む」技術は軒先(軒付<のきづけ>)や棟(品軒<しなのき>)の部分に用いる技術です。
積むために用いる皮は、軒付皮(のきづけかわ)と呼ばれています。軒付皮を厚さ2.4cm、幅15cm程度に重ねたものを、一つの単位(一手)として、十分水に浸し、土台となる裏板の上に積み、竹釘で打ち締めます。
軒付皮を積む時には、一手ずつが一体になるように横部分を十分に摺り合わせながら、差し込むようにして所定の高さまで積み重ねます。積み終わると外側に面して見える部分を『釿(ちょうな)』で所定の角度になるよう切り揃えます。

←写真説明
釿で軒付を切り揃えています。


この両方の技術に共通して用いられる特殊な技術があります。竹釘を片手で打つ技術です。
先ず20〜40本の竹釘を口に含みます。竹釘を一本ずつ、舌を使って頭が平らになっている方を先にして口から出し、くわえます。
金槌を握っている手でこの釘を掴み、金槌の柄についている金属の部分(伏金<ふせがね>)を使って、檜皮に突き刺し、次に金槌の頭を使って、完全に打ち締めます。この間、空いている手は檜皮がずれないように押さえています。
檜皮葺に使用される竹釘は、平葺(屋根面)で一坪(3.3㎡)あたり2,400〜3,000本という膨大な量を必要とします。

口にくわえた竹釘を、まさに片手でつかもうとしています。

↑写真説明
口にくわえた竹釘を、まさに片手でつかもうとしています。

伏金を使って、竹釘を、檜皮に突き刺しています。

↑写真説明
伏金を使って、竹釘を、檜皮に突き刺しています。

竹釘を、屋根金槌で、完全に打ち締めます。

↑写真説明
竹釘を、屋根金槌で、完全に打ち締めます。


完成した平葺(隅)

↑写真説明
完成した平葺(隅)

平葺の断面

↑写真説明
平葺の断面